視力という数値より、見えているという満足感が大切です。

以前にも少しお伝えしたこともあったと思いますが、患者さんが考える視力と眼科側が考える視力にはちょっとした違いがあります。

視力検査例えば、視力はどのくらいですか?

という、一般的にいう「視力」は患者さんたちは【裸眼でどのくらいの視力】というのを気にされていて、眼科側は【矯正した視力がどのくらいまであるか】というのを気にしています。実は裸眼よりも、矯正を行っても視力が出ないと何か病気があるのではないかという疑いを持つきっかけになるのです。たとえ裸眼で0.02とかしか見えていなくても、メガネなどで矯正をすれば1.0まで視力が出るのが確認できれば問題なさそうだな、というひとつの目安になります。

では、メガネなどをトライアルする際に

1.0見えないのでは弱いでしょうか?

という視力を表す数値をとても気にされる患者さんからの質問が大変多いように見受けられます。1.0見えるようになるメガネと0.9まで見えるメガネ、さてどのくらいの差がありますでしょう?

老眼が始まりかけた目に対してどうでしょう?パソコンやスマホなど、日中はほとんど近距離のものしか見ないという目に対してどうでしょう?掛ければ1.0見えるメガネでも、度がきつくて感じてフラフラになりそうなのってどうでしょう?

視力という数値はこの場合は1つの目安であり、1.0にならなければいけないという決まりではないのです。自分で掛け心地がよく、生活に不便が出ないような見え方で満足できていれば1.0が必ず見えなくても快適なはずです。眼科側としては、1.0の視力を出すより、患者さんが快適に使えるメガネができるかどうかを気に掛けているのです。

視力検査中は、適度なまばたきは必要です。

学校健診で、視力低下を指摘された男の子。数ヶ月前に作った眼鏡を掛けて、結果は左右それぞれCとDの判定。両眼で見て0.5程度。作成時は両眼で1.0が見えるようにしたはずなのに・・、と受診をされました。

ランドルト環急すぎる視力低下を心配をされた親御さんが連れていらっしゃったようなのですが、どうやらその子は視力検査そのものを必死にやりすぎてしまっているのです。ほとんど瞬きもせずに目をカッと見開いて、C(ランドルト環)の向きをただ、ただ、必死に見ているのです。

視力検査を受ける心構えというか、真面目にやろうとするそのお気持ちは十分に伝わるのですが、是非

「まばたきをして下さいねっ!」

人間の目は平均で1分間に15回~20回程度のまばたきをします。ですが、この男の子の場合、必死にランドルト環を凝視しすぎてしまっていて、横から様子を伺ってもまばたきの回数が極端に少ないのです・・。ジッとまばたきもせずに見続けると、どんどん視界はぼやけます。

実は、まばたきをしないと目の表面が乾いてヒリヒリすると同時に、涙が表面に適量ないと物が見えにくく、視力にも影響を及ぼしてしまうのです。ドライアイで視力が出にくくなるのも本当なのです。

視力が落ちてたらどうしよう・・というプレッシャーがあったのか、まばたきもせずに必死にランドルト環を見ていましたが、その男の子にちゃんとまばたきをして見てもらったら視力はしっかりと出て大きな問題はなく経過観察となりました。

視力検査を受けるときは適度に、いえ自然にまばたきをしてリラックスして受けていただければと思います。

片眼だけ視力が下がっていく症状。

近視の進行は、これが原因という特定されることがまだありません。一般的には遺伝的とか、近方作業のやりすぎなど多数の要因があるのではないかとは言われています。

視力検査ところで先日、「片眼だけ視力が落ちる」という相談を患者様からいただきました。確かに視力検査の結果はだんだんと左右差が広がりだしています。

一般的に考えれば、遺伝的要素でおそらくもう片方の目も、追いかけるように近視が進行する可能性もあります。しかし、この患者さんの場合に限っては本当に片眼だけ低下していくという事態が起きています。

目を疲れさせないようにする、規則正しい食生活を行うということはもちろんなのですが、このような場合「姿勢をよくする」ことにも気を配ってあげると良さそうです。

・寝そべりながら本などを見る
・ノートなどを書くときに首を一方に傾けながら見る
・机に対して垂直に座らずにパソコン画面などを見る など

これらの事をよく癖でやってしまっていないか、思い当たることはありませんか。長期に渡ってこのような事を続けていると片目だけ視力低下していく原因になるとも言われています。

何故かというと、ある対象物を見ている右目からの距離と左目からの距離が極端に違う状態だと、片方の目だけ視力が落ちる可能性が高いと考えられます。これは、左右の目のピント調節力が片方だけ非常に大きく作用し、もう片方はそんなに使われないという状態になります。片目だけ極端に負荷が掛かれば、片目だけ視力が低下してもおかしくありません。

両方の目を同じように使用しないと、片目だけ視力が落ちるというリスクを高めることにもなりかねません。正しい姿勢で物を見るというのは大切なことなのですね。

視力と認知症。

高齢になった時に認知症になる確率は、実は視力に大きな影響を受けると言われています。 視力が悪いのに眼科の受診をせずに放置した方は、そうでない方よりも認知症になる確率が950%も高かったとも言われているくらいなのです。

老婆この視力が悪いというのは、「見えないピンボケの状態を放置している」ということで、裸眼視力が0.1しかなくても、メガネとかを掛けて視力が1.0くらいになっているということであれば悪いという括りには入りません。

人間は実にその活動において、9割以上の情報を目から得て行動をしています。目は脳の一部です。目から入った情報が脳に伝わり処理されるというごく当たり前のことが、高齢になるにつれて脳を刺激する大変重要な役割を果たします。

この脳への視覚的刺激がなされないと、どんどんと脳は使われなくなっていきます。これが認知症への第一歩となります。視力を確保して、物が見えるという喜びが薄れていくことを回避する努力が必要なのです。物が見えないと、例えば本も読めない・テレビも見えない・散歩したり外出するのも億劫になる→何をしてもつまらない、やる気が起きない。といったような体調的な悪循環すら生じます。

そのためメガネなどで視力の矯正を行う、白内障などの手術を受けて視力を回復させる等して、 放置せずに適切な視力確保を行うことが認知症予防に大変効果をもたらすという事になるのです。

片目は近視、もう片方の目は遠視。

メガネ大抵の場合、私の目は近視ですとか遠視ですという場合、「両目とも近視」もしくは「両目とも遠視」と思われますが、片目ずつ違う場合もあります。左右の目はそれぞれ独立した器官なので、例えば右目は近視で左目は遠視ということもあり得ます。

しかし、こういった場合は程度にもよるのですが視力矯正をするためのメガネが非常にツライものになりやすいのです。

近視を矯正する場合は凹レンズ(光を拡散するレンズ)、遠視を矯正する場合は凸レンズ(光を収集するレンズ)を使います。そのため、凹レンズを通して見た物体は小さめに見えて、凸レンズから見たのは大きめ見えます。

また、人間の目では片目だけの視野は鼻側に約60度、耳側に約100度と言われています。 そうすると、近視の目に対して遠視を矯正するレンズ、遠視の目に対して近視を矯正するレンズがお互いに邪魔な不必要なものに感じてしまいます。そのため、頭痛や眼精疲労を起こしやすくなります。

こういった場合はある程度、掛けていられる(違和感のない)くらいの度数を眼鏡に入れて左右の見え方の差を縮めるようにします。あまりにも左右差があるときは、コンタクトレンズでの矯正も考えると良いでしょう。