ソフトコンタクトレンズの消毒について

一昔前までは、ソフトコンタクトレンズの消毒は「煮沸消毒」という熱処理が一般的でした。煮沸消毒システムでは、最初に外したコンタクトレンズを洗浄液をつけてこすり洗いします。しっかりたんぱく質などの汚れを落としておかないと、固着してすぐにレンズが使い物にならなくなってしまうということもあり、無意識のうちに数百回こすっていた方も多かったはずです。そのあとは、レンズをすすぎ煮沸器にかけて平均2時間程度(製品によっては30分などもありましたが)待ち、煮沸が終わったら電源コードから外して保存、といった具合に何とも面倒な工程を時間をかけて行なっていました。

現在ではこの煩雑さから開放されるかのようにコールド消毒(熱を加えない消毒方法)が世に広まり、今ではどのメーカーも煮沸消毒システムの販売を中止してしまっています。

しかしながら、煮沸消毒の消毒力の強さには定評があり、特に細菌や微生物への消毒効果には目をみはるものがありました。廃れていってしまったのは何とも寂しいものでもあります。対してコールド消毒は、このような手間と時間を極限まで省くことができますが、消毒効果を比較すると大変弱いものとなっています。コンタクトレンズで引き起こされる眼障害は、正しいレンズケアができなかったことによるものが原因として多く報告されていますから、注意していきたいところです。

ソフトコンタクトの酸素を良く通す素材って?

昔からコンタクトレンズを使っていた患者さんの中には、「ハードレンズはソフトレンズより性能がよい」という概念がある方が多くいらっしゃると思います。この「性能がよい」と言われていた理由はどのような点があるのでしょうか?1つ代表的なものを挙げてみますと酸素透過性がソフトレンズに比べて極めて高いということがあげられるのではないでしょうか。

しかし、近年はソフトレンズの中にも、抜群の酸素透過率をもつ製品が登場するようになりました。「シリコーンハイドロゲル」という素材でできたコンタクトレンズです。ハードレンズと比べると(レンズサイズ(直径)などの差もありますので)一概にどちらが良いと断言はできませんが、従来のソフトコンタクトに比べれば平均5~6倍くらいは酸素透過率が高い製品です。

発売初期の製品では、たんぱく質は付きにくいが目の中の脂質や化粧品などの油分がコンタクトに付着しコンタクトをつけると曇って見えるという症状を訴える患者さんがいらっしゃいましたが、今ではこの点を改良するために表面処理加工などを施した製品が次々と開発されています。

従来のソフトコンタクトレンズに比べて酸素を良く通し、乾きにくいコンタクトレンズという位置づけになっていますの。毎日、長時間コンタクトレンズを着けている方は検討してみるのも良いと思います。

コンタクトレンズは高度管理医療機器です

コンタクトレンズは平成17年4月の薬事法改正により、高度管理医療機器に指定されています。高度管理医療機器には、「人の生命・及び健康に重大な影響を与える恐れがある医療機器として指定されているもの」という定義があります。よく耳にするものだと、心臓ペースメーカーなどもこれに含まれます。そう考えますと、コンタクトレンズって、そんなに大それた物なの?!と、驚くかもしれませんがそのくらい使い方を誤ると大変なことになります。

近年コンタクトを誤った使い方で使用し、失明に至ってしまったという事例が報告されるということも少なくありません。特に洗浄や消毒がきちんとできていないという原因が多いようです。折角、物をよく見えるようにするために使ったのに、これでは逆効果です。

さらに、コンタクトレンズが他の高度管理医療機器と大きく違うのは、患者さん本人が自分の手で出し入れするという特殊さがあることです。例えば、心臓ペースメーカーであれば、患者さん本人が自分で出し入れするということはありません。医師らが注意を払い取り扱いします。しかし、コンタクトレンズの場合、毎日寝る前には外す、朝起きたら眼につけるという使い方をするため使用者本人が責任をもって管理するほかありません。

ただし使い方さえ誤らなければ、非常に快適な視生活を送る手助けをしてくれるものですから、上手にお付き合いしていきたです。安いもの・カラコン・その他いろいろと使う側としての希望はあるとは思いますが、やはり「自分自身の眼に合うかどうか」「正しく使用できるかどうか」に注目して選ぶことがまずは大切になるのです。